ことば

日曜に、恩師である佐藤晃一の展示に赴いた。グラフィックデザイナーの展示としては規模がとても大きい。これより大げさなものとなると田中一光の展覧会ぐらいか、と思う。会場の一角ではポスターを解説する対談ビデオが流れていて、一時間半ほどの尺だったのだけど、九割がたみた。喋るのを聞くことと、書かれたものを読むことは、案外違うものだ。いろいろな場面でもう何度も聞いた話が収録されていたけれどまた聞いて、またハッとさせられる。佐藤晃一はヴィジュアルコミュニケーションの名匠だけれど、寧ろ、言語的な背骨の頑強さからそのヴィジュアルが繰り出されているようにすら見える。ある一つの現象やヴィジュアルに対して「これはかたい」とか「つめたい」とか「スッと触れる」とか、そういう形容をされた時に、急に目の前に見せられているものが納得の行く仕組みの上に成り立っているように見えてくる。だれでも知っている言葉でだれでも知っている感覚を明確な構造に切り取っていく。言葉が重要なんだなと思った。例えば、日の丸の図柄をなにか変えようと思った時に「これは赤い丸だ」と思って初めて「青い丸」「赤い四角」という構造化された選択肢が選べるようになる。言葉に執着を持ちたい。