マンインザミラ

付き合いを断ちたいと思うほど我慢ならない人間というのはそうそういるものではないが、たまにはそういう人間も現れる。あの彼のこれこれこういうところが全く気に入らないし、とんでもなくおかしいことだ、と人を相手に愚痴を漏らしたところ、翌日に全く同じ苦情を、今度は自分に対しての指摘として言われ、無意識に殴りつけていたのは鏡の前の自分だったのかと妙に落ち込んだ次第である。よく聞きかじる心理学もどきとしてはありがちな話に思えるのもまた輪をかけて恥ずかしさを催す。そうなってしまうと最初に非難していた相手をこきおろすことなど出来ない。なし崩し的に許さざるを得なくなるような気分になる。盗人の家に空き巣が入ろうと犯罪は犯罪なのだが、空き巣に入られた盗人も後ろめたい気持ちでいてほしい気がする。そうやって人間が許しの水位をバナナのたたき売りみたいにどんどん下げていったら世の中はどうなるのだろう。案外悪くないのかなあ。